「書きのこすこと」1(1~2) 伊藤 顕
(前書き)
シニヤ・メンバーの高橋英雄さんから、会員さんへの遺書というか「これだけは知ってほしい」ということなどがありましたら、書いてほしいというお話しがありましたので、私がこれからも皆さんと学び続けたい五井先生のみ教えのポイントを、少し、お話しさせていただきます。
1、「五井先生はここ」
神様の中に飛び込みなさい
私が五井先生に初めてお会いできましたのは、昭和二十五年の秋でした。当時はまだ戦後の混乱期で、世の中のことも、人間の生き方についてなにもわかりませんでしたので、いつも心の中で、誰か立派な指導者にお会いしたいという願いが潜在していたのを覚えています。
ある日、市川駅前の知り合いの家にまいりましたとき、その方が、一枚の写真(霊光写真)を大事そうに私の前に出して、、眼をきらきらさせて、「写真を写したら、こんな光の玉になった、素晴らしい五井先生というお方がいらっしゃいます。今ちょうど近所におられますので、すぐ一緒にまいりましょう」と、もう私が一緒に行くのが当然のように履き物をはきながら言われました。
そのお写真を拝見していますと、何か不思議と心が安らいできまして、私は思わず「はい、お願いします」とお答えしていました。
そして、すぐ近くの家にまいりました。二階に上がりますと、五井先生はまるで私が来るのを待っておられたかのように、
「さあ、こちらにいらっしゃい。お浄めしましょう」といわれました。
私はお浄めというのがどうゆうことか分かりませんので、只先生の前に座って目を閉じておりました。
先生の前に座った瞬間、なんとはなしに、来るべき所についに来たという懐かしい喜びでいっぱいでした。するとたちまち、魂の底にひびてくるような、すごい五井先生の拍手のひびきに包まれてしまいました。
私は心の中で何か唱えなければと思い、覚えていたお経の文句を思い出そうとしていました。でも思い出そうとするたびに、「後ろを向いて」「前を向いて」と何度もお浄めしてくださり、想いがみんな消されてしまうのでした。そして想いが何も無くなったときに、「はい、よろしい」とお声がしましたので、ホッといたしました。そして心がとても安らかになり、永い永い修学の旅行を終えた子供が、親の許に帰ってきたような心になって、これから五井先生にすべてを教えていただこうと思いました。
五井先生は私に「あなたは今まで何をしてきましたか?」と聞かれました。咄嗟のことなので私はどうご返事をしていいか分からず、「はい、飛行機に乗っておりました」と、実にとんちんかんなお答えをしてしまいました。でも五井先生はニコニコされて「そうですか」と言われ、そして「神さまの中に飛び込むんですよ。」と言われました。
後で考えますと、私は飛行機に乗っていて終戦を迎えたのですが、飛行機の操縦は”無心”でないとできませんので、五井先生と初めて対座したときの私は、その飛行機を操縦していた時と同じ心境になっていたのだと思います。
そして五井先生は「また、いらっしゃい」と言われました。その「また、いらっしゃい」と言われたお言葉が、ずーっと何十年も今日まで続いているのです。
「五井先生はここ」
五井先生の市川の新田道場にまいりますと、道場入り口の塀の柱には「五井先生はここ」と書かれた一メートル位の板が二枚貼ってあるだけでした。単純素朴なそのお言葉は単に道場の場所を指し示しているだけでなく、自分の胸に手を当てて「五井先生はここ」「五井先生はここ」と言えば、いつでも中に五井先生がいらっしゃるんだという素晴らしいお言葉だと気がつきました。
※伊藤さんは航空士官学校を卒業、終戦まで練習機にのって訓練していました。
2、 五井先生の「無言の説法」
その頃、道場の玄関は沢山の信者の方の履き物でいつも溢れていました。私がある時、道場に行ったとき、ハッと驚いたことがありました。
それは玄関の靴脱ぎ場に、五井先生のお姿を拝見したのです。
五井先生は、お一人でいくつかの散らかっている靴や草履などをお昼休みにお浄めの部屋から二階に上られる時でしたが、玄関をお通りになる時、靴脱ぎ場の板の周りに信者の方の履き物が沢山に乱れて脱いでいるのをご覧になって、それを丁寧に一つ一つ揃えていらっしゃるお姿でした。
五井先生は、 信者さんの脱いだ一つ一つの履き物を通して、その方のお浄めをしてくださっておられたのです。そして何もおっしゃらずに目立たぬように、二階の部屋に上っていかれました。そういうことが何度もありましたので、それを拝見した人達はみんな五井先生をお手本にして、そのまねをさせていただくようになってまいりました。それから靴脱ぎ場はいつの間にかきれいに整頓されるようになりました。
五井先生は、常々、「宗教というのは行いである」とおっしゃっておられましたが、本当に身を以て実践しておいででした。私たちは、五井先生から無言の説法をいただきました。
この五井先生のお話を、地方にまいりましたときにお話いたしましたら、一年ほどたってその方にお目にかかりました時に「あの時の、五井先生の靴を黙ってそろえられたお話をお伺いしてから、私の心は変わりました」と言われました。・・・
今までその方は自分の玄関に脱ぎ捨てられていた子供さん達の履き物の脱ぎ方をいつも注意していたのですが、あの五井先生のお話を聞いてから、子供さんの靴を通して「この子の〇〇さんの守護霊さん、今日もこの子をお守りいただきまして有り難うございます」
と一つ一つの履き物に感謝しながら揃えてあげれれるようになったら、家の中がすばらしくなっていかれたと、いわれました。
五井先生は、宗教というのは沢山のことを知ることよりも、一つ一つのことを実行するのですよ、と言われ、私たちは五井先生から「無言の説法」をいただきました。
(著者紹介)
宇宙子科学(CWLP)シニアメンバー元白光真宏会理事、教育局長。大正十四年一月生れ。2019年2月、帰神(逝去)。
(五井先生研究 No。166から)
※高橋英雄様、伊藤顕様のお許しを頂きこの「書きのこすこと」を、「五井先生研究」から転載させて頂きました。高橋様、伊藤様に無限なる感謝です。(I)