『戦わない闘い』 : 青い鳥通信第72号から
先日、NPO 法人の関係者を対象とした映画の試写会がありました。『カンタ・ティモール(ティモール万歳!)』というタイトルの映画です。映画の題名となった東ティモールは、2002年にインドネシアから独立しましたが、20年の独立運動の間に、人口150万人のうち、実に1/3 の50万人が殺されました。
映画の中では、残虐な処刑シーンや死体、イラストによる拷問やレイプのシーンもありました。(この映画には、視聴年齢の制限があります。)しかし、多くは東ティモールの方々の笑顔や子供が楽しそうに遊ぶシーン、歌や踊りのシーンで、悲壮感はありません。
インドネシア軍による蛮行(その資金の一部は日本政府からの支援金も含まれているのですが、東ティモールには石油やレアメタルなどが産出されるため。)にもかかわらず、東ティモールの方々は武力での抵抗をせず、インドネシア軍の捕虜に対しても殺害することも、拷問することもせず、「なぜこんなことをするんだ。私たちは家族や仲間と仲良く暮らしたいだけだ。自分たちの文化や森や神々の住むこの土地を大切にしたいだけだ。」と彼らは間違いをこんこんと諭し、無傷のまま釈放しつづけました。 20年も繰り返しますが、自分の妻をレイプし、両親や兄弟や子供たちを殺したかもしれない相手をですよ。
彼らの無抵抗の闘いは、やがてインドネシア国内からも、ティモールの人々を殺すな、東ティモールの独立を認めろ!との運動となり、インドネシア国内の世論を無視できなくなった政府は東ティモール独立の是非を問う国民投票を余儀なくされ、数々の弾圧にもかかわらず、90㌫以上という圧倒的多数の賛成で見事に独立を勝ち取りました。
これだけの死者を出したにもかかわらず、東ティモールには孤児がいないのです。村全体で子どもを育てているからです。映画のラストシーンでの、すべての子どもを殺された老人の言葉には特に感動しました。「ひとりぼっちになってしまった。悲しいよ。でも、恨んじゃいない。今日を歌って踊って楽しく過ごすだけさ。」と
ティモールの方々は武器を持って戦ってはいません。彼らが闘ったのは、インドネシア兵ではなく、悲しみや苦しみ、恨みや憎しみという自分自身の暗黒面(エゴ)です。そして、見事に勝利し独立を勝ち取ったのです。皆さんはスターウォーズのラストシーンを覚えているでしょうか?主役のルークは最後に剣を捨てました。それがダークスペイダーを暗黒面(エゴ・とらわれ)から開放することになりました。
東ティモールの人々の闘いは、武器こそ手にしていませんが、壮絶な闘いでした。その闘いに勝利した方々が100万人もいらっしゃったとは、なんと心強いことでしょう。イエス・キリストは死の間際に、処刑人を許す仕草をしたとされていますが、彼らの中にも同じ尊さを強さを感にさせていただきました。いずれ、呉でも上映の機会をつくりたいと思います。
(平成25年4月号 青い鳥通信第72号 から)
「世界人類が平和でありますように」の祈りは東ティモールの人々と同じ心同じ行為です。(I)